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ワンモア!
は?青春に関する作文?なんでもいいから書けって?――お前んとこの先生も随分ぼんやりしたお題出すなあ。
ああ、うん、わかるわかる。青春って結局なんぞ?ってなるよな。青い春ってもうその字面だけでちょっと恥ずかしいというか、照れるというか。部活動を頑張ってるとか、恋愛頑張ってたら青春なんだろうか。友達と遊びにいくのも?つか、学生でなくても青春って呼んでいいのかとか。
自分が青春できてるのかもわかんないって?僕からすると、お前も結構学生ライフインジョイしてるような印象だけど、うーん。
ああ、じゃあパパから聴いた青春の話、みたいなの書いてみる?一応ネタ、あるにはあるけど。
うんうん、インタビューっぽくするのってある種最終手段だし。他の人とネタ被らなそうでいいかもな。
今時チャットなんちゃらで適当に取り繕ってレポート提出するやついるだろうしなあ。手書きの作文だとしても、AIが作ってくれた文章を書き写すことはできちゃうわけだしさ。
というわけでまあ、話そうかな。
やっぱあれかな、中学の時の話。僕がまだ、中学一年生だった時のやつ。小学校の時の話じゃなくてごめんな。あ、でも、全然小学生のお前にも通じる話だと思うよ。
僕もいつかりっちゃんに、そういう友達ができてほしいなって思ってるし。今もうそういう友達がいるならすっげー嬉しいって思うし。
僕が通っていた中学は、名前がやたら長かったもんでみんな略して“ほの中”って呼んでた。父さんの地元がどこなのかは知ってるよな?結構のんびーりした田舎町。一応東京ってことにはなってるけど、時々埼玉県とか別の県と間違えられそうな、そう、区の仲間に入れて貰えなかったようなエリアね。
でも、僕はそんな郊外の小さな町が大好きだった。
治安もいいとこだったしな。ほの中周辺で不良って言われるような人は全然見たことがなかったよ。まあ、あんな人の少ないところでツッパってても誰も注目してくれないから、不良になる意味もなかったのかもだけど。あと、狭い社会だから誰かがやらかすとあっという間に噂になるってのもあったのかもな。
小学校と比べて中学校は数が少なかったこともあって、遠くから通ってくる子も結構いた。
ほの中に来る生徒は、ある三つの小学校の出身者が多くて。そのうち一番遠い小学校は隣町だったんだけど、これがまあ、結構荒れてたらしくてさ。
その小学校からうちの中学校に来た子は口々に言ってた。ほの中は平和でいい、ガラスも割れてないって。――いや日常的にガラス割れてる学校ってどんなよ?って僕はつっこんだもんだ。
そんなほの中の一年一組は、全体的に陽気な奴が多くてさ。男女問わず大体の奴が仲良しだった。クラスの人数が三十人くらいしかいなくて少なかったってのもあるのかもしれない。
みんなで近所の遊園地に行くみたいなことも少なくなかった。今はもう潰れちゃったけど、昔は小さな遊園地があったんだよ、あそこ。
あの不思議な出来事が起きたのは、そんなほの中一年一組が終わる間際――三学期のことだったな。
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