8人が本棚に入れています
本棚に追加
2
「勉強は嫌いだけど、テスト後の『終わったー!』って感じは好きなんだよね」
教室の机に頬杖をついた天奈は右手で握るシャーペンの背をこめかみに当てる。
「解放感っていうか達成感っていうか。でもそのためには勉強しなきゃだめっていう」
「ジレンマだな」
「ね。好きなもののために嫌いなことしなきゃいけないのなんなんだろ」
机の上に開かれたノートに天奈はシャーペンを走らせた。
僕が考えた問題の下にいくつかの数式が並ぶ。途中式の一部が間違っているが、ひとまず泳がせておく。
「雨上がりも一緒だね。雨は濡れちゃうから嫌いだけど、雨上がりは綺麗だから好き。雨降らずに雨が上がればいいのに」
「無茶言うなよ」
「勉強せずにテストが終わればいいのに」
「それ色々終わるやつ」
放課後の教室で僕と天奈は机を並べて勉強していた。というより僕が天奈に勉強を教えていた。
期末テストに向けて勉強を教えてほしい。彼女にそう頼まれたのだ。
私の友達の中で一番勉強ができるから、という理由らしい。
最初のコメントを投稿しよう!