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「勉強は嫌いだけど、テスト後の『終わったー!』って感じは好きなんだよね」  教室の机に頬杖をついた天奈は右手で握るシャーペンの背をこめかみに当てる。 「解放感っていうか達成感っていうか。でもそのためには勉強しなきゃだめっていう」 「ジレンマだな」 「ね。好きなもののために嫌いなことしなきゃいけないのなんなんだろ」  机の上に開かれたノートに天奈はシャーペンを走らせた。  僕が考えた問題の下にいくつかの数式が並ぶ。途中式の一部が間違っているが、ひとまず泳がせておく。 「雨上がりも一緒だね。雨は濡れちゃうから嫌いだけど、雨上がりは綺麗だから好き。雨降らずに雨が上がればいいのに」 「無茶言うなよ」 「勉強せずにテストが終わればいいのに」 「それ色々終わるやつ」  放課後の教室で僕と天奈は机を並べて勉強していた。というより僕が天奈に勉強を教えていた。  期末テストに向けて勉強を教えてほしい。彼女にそう頼まれたのだ。  私の友達の中で一番勉強ができるから、という理由らしい。
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