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 セリフの意味を汲み取れず何も言えないでいると、天奈は「歩きながら話そ」と歩みを再開する。  僕は彼女の隣に並んだ。 「小さい頃にね、雨上がりの道路が水滴できらきらしてて、お城の豪華なカーペットに見えたの。そのまま盛り上がっちゃってるんるんでスキップとかしちゃってさ。お気に入りのキャンディも食べてたし、もう気分は完全にお姫様だよ」  濡れたアスファルトの道を二人並んで歩く。  けれど足音はひとつしかしない。地面を踏んで飛び散る水滴も、もちろん一人分。 「それで気付いたら浮いてたの」  ぴょんと小さく彼女は跳ねた。  スカートが少しだけ膨らむ。着地音は聞こえなかった。 「わからんなあ」  僕は首を傾げた。話を聞いてみたが何ひとつわからなかった。どうやら本人もよくわかっていないみたいだ。  ただ事実として、彼女は地面から浮いている。  それを受け入れるしかなかった。 「あれ、戻ってない?」  ふと隣の天奈を見ると身長が縮んでいた。  ぱちゃ、と彼女のローファーが水たまりを蹴る。 「あ、飴食べきっちゃったからだ」 「もう意味わからん」  僕がさらに首を捻ると、天奈はおかしそうに声を上げて笑った。
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