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「雨の放課後は教室で勉強に限るね」
「優等生のセリフだな」
「よーし赤点回避のために今日もがんばるぞ!」
「最底辺の目標だな」
意気揚々とノートを広げた天奈を横目に僕は自分のノートを机から取り出した。
天奈が問題を解いている隙に、僕もノートを読み返す。
期末テストはもうすぐだ。人に教えてばかりではいられない。
「お姫様も勉強とかしてたのかなあ」
「そりゃしてただろ。数IAかは知らんけど」
「そう思えばやる気出てきた」
「お姫様パワーすご」
猛烈に数式を書き殴りはじめた天奈のノートを見ると、いつも通りミスが散見されたがいったん置いておく。
それを指摘するのは彼女が行き詰まったときだ。
「にしてもよく喋りながら勉強できるな」
「ふっふっふ。私勉強してたら無性に人と喋りたくなるんだよね。それを叶えるために十年かけて習得した技だよ」
「この勉強会のおかげで僕もできるようになってきたわ」
「私の十年を返して」
悔しそうに顔を歪めながらも手は計算を進めている。
しかしその手は不意にぴたりと動きを止めた。
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