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「ねえごめん、ここどうしたらいいんだろ」 「あーこれは十七ページの公式を変形させるんだ」 「そっか。その発想なかった」  天奈は書きかけの数式を消して新しい式を書く。これで次に進むための足掛かりができたはずだ。  僕は自分の勉強に戻ろうとしたが、まだ天奈はこちらを見ていた。 「ん、なに?」 「どうして上利くんは勉強ができるの?」 「勉強したから」 「聞かなきゃよかった」  シャーペン片手に唇を尖らせる天奈は今日も途中式を間違えていた。僕は見ないフリをする。  窓の外では細い雨がまばらに降っていた。  最近雨が多いのは、テスト間際の僕らを心置きなく机に向かわせようとしてるのかもしれない。 「すごいよねえ上利くんは」 「地面からちょっと浮けるほうがすごいと思うけど」 「全然だよ。五センチしか浮けないもん」  ちゃんと測ったことがあるらしい。  雨上がりのアスファルトで足の裏に定規を当てる。そのシュールな光景を想像して笑いそうになったが天奈の表情を見ても止めた。  彼女の自嘲気味に歪めた唇で言葉を続ける。
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