ヒラメと太陽

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 気付けば、あの日から、全てを失ったと思っていたし、何もかも、もう手に入らないと思っていた。しかし、今日はどうだろう。大物を釣り上げ、更なるチャンスを求めている自分がここにはいる。  そう、きっとそうだ、人生だってそう。一度は終わった人生……。あと一回、やり直す事に希望を見出したって良いではないか。あと一回、趣味を楽しんでみて、あと一回、会社で真っ当に働いてみて、そして、あと一回……。新たな恋を探したって良い。  気が付けば日が暮れていた。結局、ヒラメの当たりはもう来なかった。しかし、それは問題ではなかった。人生のセカンドチャンスという大きな当たりに期待しても良いと気づけたのだから。  帰宅後、ヒラメパーティーの準備をした。あと二時間程で友人達が来るという状況だ。  とっくに役目を終えた無数の酒瓶達をゴミ袋に押し込んだ。換気をして、陰鬱で淀んだ空気を入れ換えた。あらゆる場所に堆積した分厚いホコリを掃除機で吸い取ったら、水拭きをした。  だだっ広い部屋の真ん中に乱雑に集約された生活必需品は、パズルピースのように、あるいは、まるで失われた日常の欠片のように、あるべき場所に収まってゆく。 久しぶりにせわしなく動いたが、心は暗い海中から大空に飛び出したトビウオのように軽やかだった。綺麗になった部屋を見て思った。ひとりで住むには広すぎる。それは間違いない。しかし、友人とパーティーをするには最適な空間だった。
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