サークリスよ、永遠に

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サークリスよ、永遠に

 水の中に静かに漂う青い光が、ふと何かの気配に反応した。大きな海の中で、丸い影がゆっくりと回転している。その影は、一回、ぐるぐると回り、次の瞬間、急に動きを止めた。海の中で何かを探すように、周囲を見渡す。  その影の正体は、一見、普通の人間のように見える。だが、身体は透明な膜に包まれている奇妙な生き物だった。  彼は、突如地球上に現れた不思議な生命体なのだ。仮に彼を「サークリス」と呼ぼうか。サークリスは、何か特別な使命を持って海にいるのだった。 「あと一回、ぐるぐるしなければならない」と、サークリスは心の中でつぶやいた。  サークリスは再びぐるぐると回り始めた。水の抵抗を感じながら、彼は静かに回転し続ける。回転の途中で、彼の目の前に突然、光が現れた。その光はまるで生き物のように、サークリスを導こうとする。  サークリスはその光に引かれるように、ぐるぐると回転しながら光の方へ進んだ。光の中には、彼がずっと探していたものがあるのだと直感した。  回転が徐々に速くなり、サークリスは水の抵抗を感じなくなっていく。やがて、彼の体は完全に光に包まれた。ぐるぐると回りながら、サークリスはついに光の中心にたどり着いた。  その瞬間、サークリスの体は水の中で溶けるように消え、青い光だけが残った。そして、その光もやがて消え去り、海の中には静寂が戻った。  サークリスの使命は終わり、彼は永遠に水の中でぐるぐるすることなく、静かに消え去った。  サークリスは、海を浄化するために天から導かれてきた清めの生き物だった。 かつて地球の海は青々しく、澄んでいた。今では、ほとんど澱み、くすんだ青色をしていたのだ。    サークリスよ、永遠に。    青い光が消える頃、海は元の色を取り戻し、波打つ音がしじまに跳ね返る。               了
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