生き別れの弟に

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 俊哉、父さんに会いたいと思わないか?  僕は母さんに会いたい。お前はどんな風に成長しただろう? 俊哉の顔も見てみたい。  お前の残していったグローブとバットも、まだ家に置いたままだ。  僕は会いにいくことにした。夏休みに、電車に乗って。  父さんには相談しなかった。だって、怒られると思ったんだ。最近は、学校のプリントを見せるだけでも殴られる。 「俺にそんな面倒をさせる気か!」って怒鳴るんだ。  そんなだから内緒で行くことにした。  お金はお年玉を使った。父さんもたまにはくれるんだ。飲みすぎることはあるけど、ギャンブルや無駄遣いはしない人だから。  調べるのは簡単だった。  母さんと俊哉に会いたいと素直に聞いたら、おばあちゃんが教えてくれた。  電車を乗り継いで2時間の距離だったけど、夏休みでもすることなんかない僕には、時間はたっぷりあった。  俊哉に届けるための荷物を抱えて、僕は電車を降りた。  夏の蒸した空気が絡みつくが、空は真っ青で気分はいい。  事前にアプリで登録していた番地までは、ここから徒歩で15分だそうだ。  今は午前11時40分。お昼ごろなら昼食のために在宅していると思うけど、出かけていないといいな。  少し不安に駆られた僕は、事前に連絡をしないまま、二人を驚かせようとしていた気持ちが少し陰った。
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