生き別れの弟に

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 俊哉は、幼い頃に離れ離れになった、僕の弟だ。  そのとき、僕は10歳で俊哉は8歳だった。  二個違いだった僕らは、まるで双子のように一緒に育った。俊哉は僕と同い年の気になって平気で楯突いてきたし、同じもので遊んで、喧嘩もいっぱいした。  両親が不仲だったことは、小学生ながらも気がついていた。だから離婚することになったと言われても動揺はしなかった。  でも俊哉と離れることになるとは思わなかった。  俊哉は母さんといなくなった。  父さんは、母さんたちがいなくなってから人が変わったようになった。後から知ったことだけど、離婚した理由は父さんの暴力だったらしい。知ったというのも、その矛先が僕になったからなんだけどね。  俊哉はお父さん子だった。僕はお母さんっ子で、バランスが取れているね、なんて四人で言っていたのに、なぜ母さんは俊哉を連れていったのだろう。  父さんは俊哉の方が好きだった。同じ野球好きで、いつも二人はキャッチボールをしていた。四年生になったら野球団に入れると言って、楽しみにしていた。僕はどちらかというと内向的な方だったから、絵を書いたりゲームをしている方が好きで、父さんと一緒に何かをするなんてことはほとんどなかった。  父さんは俊哉が上手に球を取れたり、テストでいい点を取ったりすると、俊哉を抱き寄せて頬と頬をくっつけて、その喜びを表現していた。  僕は一度もされたことがない。  あれが羨ましかった。
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