次の雨まで

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「大規模商業施設建設予定地の下見に行ってこい」 部長の業務命令で、俺は遠く離れた山奥まで出張に来ていた。 「この事業は現時点で極秘事項だから他言無用だ。情報漏洩はインサイダーに関わるからな」 家族や親しい人も含めて誰にも言うなよ、と念を押され送り出された。 資料用の現場写真の収集が目的だが、エリートの俺としては普通の現場写真なんかでは満足しない。 頂上からの風景も撮るつもりだ。 資料を見る関係者に、今後、そこに建設されるであろう商業施設から眺められる絶景を想像させるためだ。 資料作り一つとっても発注者の想像を超えてこそエリートというものだ。 車で進める道が終わり空きスペースに車を停めると、俺はリュックを背負い、カメラ片手に山に足を踏み入れた。 何年も人の出入りの無かったような雑木林は木に覆われていて、雑草も伸び放題だった。 スマホにダウンロードしておいた地図でも道は途中までで、あとは頂上まで獣道を突き進むしかなかった。 この指令を受けた当初は適当に写真を撮ったら、地元の温泉宿でのんびりしてやろうと思っていたのだが、ここは想像以上だった。 山を歩き始めて数時間経った頃、集落があった形跡を見つけ、舗装された道を期待したが願いは虚しく散った。 それでも、過去に人が通ったような道らしきものがある事に気付き、そこを進むことにした。 頂上を目指した先人がいたのだろう。 この道を進んで行けば、頂上に着くことは間違いないはず。 今日は快晴だし、素晴らしい景色が望める。 資料作成用写真は完璧な物が出来そうだ。 俺の評価が上がることは約束された。 そう思った矢先、地面が抜けた。
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