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後頭部と足と腰の痛みで目を覚ました。
気絶していたらしい。
周りは壁に囲まれていて薄暗く狭い。
俺は仰向けに横になっている。
足を延ばせる程のスペースはなく曲げた状態だ。
見上げれば、遥か上方に穴が開いていて夜空らしきものが窺える。
晴れているからか、夜なのに月明かりで辺りはぼんやりと明るい。
落ちたんだな。
長年使われていない枯れ井戸なんだろう。
腰の下にある割れた木片が、この枯れ井戸の蓋の役割をしていたのか。
それを俺が踏み抜いたらしい。
痛む腰に負担を掛けないように、ゆっくりとした動作でポケットのスマホを取り出す。
まずは情報収集だ。
電源を入れると『20:42』と表示され、こんな場所でも奇跡的に電波は通じるようだ。
着信履歴が85件も入っている。
全て会社からだ。
そこで、マズいことに気付いた。
充電が『5%』だ。
一旦、電源を切る。
スマホで助けを求めるにしても誰に掛けたらいいんだ。
普通なら救急か警察だろう。
しかし、ここの場所を説明できない。
今日、ここに来ることは家族や同僚にも言っていない。
部長は俺がここにいることを知っているが、いつも口だけで助けを求めた所で頼りにはならないだろう。
充電の残り具合から通話できるのはせいぜい1回。
やはり、救急に連絡するのが一番いい。
俺はスマホの電源を入れた。
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