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ダイヤル動作を行おうと画面に触れようとした瞬間、着信があった。
登録されていない番号だ。
普段俺は、取引先から重要案件の急ぎの連絡があることに備え、例え知らない番号でも即座に出ることにしている。
今回に限り、その必要はなかったのだが、普段の習性から通話ボタンを押してしまった。
「もしもし?」
「あー、オレオレ。ちょっとマズいことになってさー。お金が必要になったんだよねー」
振り込め詐欺かよ。
貴重な通話時間をこんなことに使うなんて。
頭にきた俺は怒鳴りつけてやった。
「テメー、ふざけんな!こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよ!テメーが責任取って俺を助けに来いよ!分かったな!」
言い終わりスマホの画面を見ると、真っ黒になっていた。
電源ボタンを押しても電源は入らず。
……終わった。
助けは来ない。
あとは自力で登るしかないだろう。
足の傷み具合から骨が折れている可能性が高い。
見上げれば、井戸の内壁はデコボコしている。
登れないことはない。
後は回復するまで生き延びるだけだ。
その後、生き残るためには動かないことが重要だと判断し、睡眠を取った。
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