次の雨まで

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明るくなって周囲が見えるようになり井戸の中を調べてみたのだが、俺は寝転がったまま腰を抜かした。 瓦礫と共に人骨があったのだ。 白骨化しているから相当前に落ちた人だろう。 身動きが取れないながらも人骨と思われるものを端に寄せて手を合わせた。 それからは時折降る雨が井戸の壁を伝ってくるのを必死で(すす)った。 雨水が唯一の命綱だった。 雨を待つ間、何もすることがなく、どうしてこうなったのかを考えた。 そして、ある結論に至った。 犯人は部長だ。 優秀な部下に自分の地位を(おびや)かされるのを恐れた部長は排除に乗り出した。 誰にも自分の居場所を伝えさせずにこの井戸まで誘導し落とす。 今回、俺が運よく井戸に落ちなければ、他にも似たような場所があってそこに誘導するはず。 この白骨化した人骨は過去に失踪したエリート社員だろう。 85件の着信履歴は、スマホの充電をなくして助けを呼べなくするために部長が掛けたものだろう。 雑草だらけの場所で、この井戸に通じる道だけ通れるようになっていたのは、ここに誘導するために部長が事前に仕組んでいたものだった。 そこまで分かったからと言って、今の俺に出来ることはない。 今、出来ることは、この井戸の壁を登ることが出来るくらいまで体力を回復させることだ。
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