相合傘

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「いつまでも一緒だと思っていたのに、進級してクラス替えで、離れ離れになってさ。でもちえ先生は、変わらず僕と遊んでくれると思ってた。いつまでも僕と一緒だって。それなのにさ、先生、新しいクラスが「今まででいちばんだいすき」って、無邪気に言ってたんだよな……。  その時僕は知ったんだよ。人はその存在がもう凶器なんだっていうことをね……」 「陸くん」  ずるっ。  かっくん、頬杖をついていた腕を急に引き抜かれる。  そして僕の手を取り、圭は言った。 「もう帰ろう」 「圭……」 「そして傘に入れてくれ。僕は今日も傘を忘れた」 「またか……」  僕は自分の折りたたみ傘を、恨めしく見つめた。    そして今日も通常運転。男二人の相合傘。 「もしかして……圭」 「ん?」 「……傘を買う金がないのか」 「傘はある。家に」 「じゃあ持ってこいよ」 「ごめんって」  僕だって相合傘がしたいってことだよ。  不意に僕はその言葉を思い出した。  そうだった。  失恋をしたと傷ついているのは、ひょっとしたら僕だけではないのかもしれない。  圭もまた、そうなのかも。  圭もまた、そうなのかい?
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