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心の中で聞いたとて、返事が返ってくるでもなく。
聞くのが怖くもあったので。
「失恋って、つらいな」
とだけ言ってみた。
「ああ、そうだな」
と、圭は言った。
「……圭も、失恋、したのか」
「うん。した」
「……そ、そっか」
やっぱり、そうだったのか。
でも。
「てか、毎日のようにしてるし」
とも圭は言った。
まいにち?
「毎日って、どういうことだ。ま、まさかお前、まさか」
「「まさか」?」
「いや……その」
まさか。
もしかして。
圭もまた狙っていたのか?
伊野さんとの相合傘チャンスを……?
でもそんなこと、デリケートな問題だしやっぱり聞くのが怖い。
怖いけど、気になる……!
だから僕は、
「相合傘が好きだったのか」
という、訳の分からない問いを発してしまった。
「好き」
圭はつぶやいた。
「うん。好きだね」
すき、と繰り返す、その「すき」が、じんわりと雨に湿ってやわらかくなる。
「気がついたら好きになってた」
「……ふうん」
「ていうか、となりにいられるだけで、幸せ、なんだよね」
「ふうん……」
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