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「陸くん。人間って、そういう存在でもあるからさ。「存在が凶器」ってのは、ちょっと、極論すぎるのではないかな」
「……」
「陸くん、聞いてる?」
「え、聞いてるよ」
「そうかなぁ。……あ」
空が明るい。いつの間にか雨が止んでいたのだ。
圭は傘をとじた。
「あーあ。せっかくの相合傘だったのに」
傘をたたみながら圭が言った。
「はい、ありがとう」
折りたたみ傘を受け取る。圭のたたみ方は適当だ。伊野さんがたたんでくれた折りたたみ傘は、美しかった。
「またよろしくね」
「何がだよ。もうこりごりだ、相合傘なんて」
「まあまあ。夏はまだまだこれからだから。……あれ?」
ふと圭が、僕の顔をのぞきこむ。
そしてうれしそうに言った。
「雨上がりもいいもんだね」
「な、何で」
「陸くんの面白い顔が見れるから」
「は? は?」
「じゃあまた明日〜」
圭は笑いながら去っていった。
くそ、あいつ。
真っ赤な顔で、悪かったな。
それもこれも、圭のせいなのに。
好きだ。って言った、圭の言葉が、なぜか届きすぎるくらい届いてしまった。
相合傘のことなのに。
相合傘のこと、だよな?
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