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「陸くん、恋しちゃったの?」
「うおっ」
蛇口の水をひねりすぎて、腕までびちょびちょになってしまった。
「な、何を言っているのか」
「だって「チェリー」歌ってたから」
「チェリー」
「こいしちゃったんだ、たぶんー」
「うお、まじか」
恐ろしい歌だ。本音でしかないじゃないか。
「そーなの?」
と、圭。
「陸くん、好きな子いるの?」
「は? いや? トイレ行ってきたら?」
「終わったからここにいるんだけど」
「……」
「え、まじ? まじと書いて本気? 陸くん、初恋じゃーん」
「ちょ、静かにしろよ」
「えー誰々? あ、分かったかも」
「わーっ!」
恐るべし幼なじみの嗅覚である。いや、自分が分かりやすすぎるだけかもしれないけど……。
場所を改め、打ち明けることにした。
校舎の陰、非常口を出たところ。二人だけになると圭はすぐに言い当てた。
「伊野さんでしょ」
ばれてた。
「な、なぜ分かった」
と、一応聞いた。
「そりゃ分かるよ。毎日明らかに伊野さんと帰ろうとしてるから」
「ううう……」
「伊野さんかわいいもんねー。分かる分かる」
うんうん。圭はため息まじりに首肯した。
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