相合傘

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「……分かるのか」 「ああ、分かるよ」 「え、そうなんだ……え。もしかして圭も、伊野さんがタイプ、とか?」 「え?」 「それか、誰か好きな子がいるとか」 「いや待って。え? 何でそうなんの?」 「だって。「分かる分かる」って」 「え? いや、そんなの、まあ。本とか読んでるからかな? 僕ぐらいになると分かっちゃうんだよね。色々と」 「ふぅん。圭、本好きだもんな」  そういえば、伊野さんも本とか好きなのかな。提出物以外に図書館行く理由って、「純粋に本が好き」とかじゃないとありえないもんな。 「……確かに、好きな子ならいるけど」 「お?」  ぽとん。キャンディの包み紙を捨てるように圭がつぶやいたので、僕はすかさずそれを拾い上げた。 「今何て」 「あ、まあまあ」  圭は余裕ぶっこいて半笑いだが、やらかしたのだと僕には分かる。めちゃめちゃ首筋が赤くなっている。 「あ。いる、ていうか、いた」  と、圭は修正した。 「え、えーっ!」  早いな。圭のやつ、恋をしてしかも振られているのか、僕が傘ごときでモジモジしている間に。 「いや、やっぱ「いる」かな。でも、叶わなさそうだしな〜」 「え、誰? 誰?」
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