相合傘

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「ん〜……内緒」 「内緒て! 何で! 言ってよ水くさい!」 「いやぁ、あんまり陸くんに言うメリットがないっていうか」 「え? どういうこと?」 「まあ……強いて言えば。僕だって相合傘がしたいってことかな」 「?」 「もう、教室戻ろ」  相合傘?  どういうことだ。分からん。  首をかしげる僕の上には、積乱雲が着々と雷のねぐらを築いていた。    空が轟く。  太い稲妻が闇を裂いて、一斉に雨が降り出した。  雷がひどくてさすがに危険だということで、しばらく学校で待機、ということになった。伊野さん相合傘チャンスも、今日は残念ながらお預けかもしれない。  僕は折りたたみ傘を出し、伊野さんに「傘持ってますよ」アピールを秘密裏に試みた。もちろん僕の存在など意識の圏外だってことは、百も承知の上である。 「今これ読んでる」  圭はスマホの画面を見せてきた。本の表紙の画像と、タイトルが映し出されている。ときめくとかときめかないとかでなんちゃらかんちゃら、とかいうとても長いタイトルなのでもう忘れた。 「へぇ。恋愛もの?」 「まあ、そうかな」 「図書館で借りたの?」 「うん。あ、でもネットでも読めるよ」
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