相合傘

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「え、まじ?」 「うん。読んでみて。陸くんの感想が聞きたい」 「ふうん。分かった」  と言いつつ、多分読まないなと思った。あんまり読書自体が好きではないのだ。自分でページをめくらないと話が進まないので、疲れてしまうからだ。  でも、読みたい、という気持ちもある。それは特に圭が本の話をするときに限られるのだけど。何だか、圭がよその人になったみたいな、そんな寂しさみたいな気持ちが生まれるのだ。僕の知らない星の話をされている時みたいな、そんな感じ。  でも、読書した方がいいのかな。伊野さんも図書館にいたし。本、好きなのかもしれないし。  ノートの隅に棒人間を二つ並べて、想像してみる。 僕「伊野さん、何か本を探しているのかい?」 伊野さん「あら、松本くん。私、恋愛小説を探しているのヨ」 僕「そうなのかい。それじゃあ、これなんかどうだい」 伊野さん「あらやだ。私、これ、読んだことあるのヨ! 松本くんもこの本が好きなの?」 僕「いやあ、まあ、人間だったらフツー読むでしょ」 伊野さん「すってき〜! 付き合いましょ!」  ……ってなるか?  いや、ならないな。
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