相合傘

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 なぜなら、本読んでないから。本のこと何も言えないから。こんなやり取り、できるはずがない。  できる奴がいたとしたら、圭の方が絶対できる。  圭の方が……。  ん?  僕はノートに書いた二人の棒人間を見比べた。  こっちが伊野さんで、こっちが。  圭?  圭の声が呼び戻される。    好きな子ならいるよ。  伊野さんかわいいもんね。  陸くんに言うメリットがないっていうか。  僕だって相合傘がしたいってことだよ。  僕に言うメリットがないって、もしかして。  圭が好きな子って、ガチで伊野さん、だったりする?  もしそうだとしたら、そりゃ僕には言えないだろう。そりゃそうだ。いつも傘をさしてくれる心優しい圭のことだ、友だちの好きな子だと知ったら、絶対遠慮するに決まってる。めちゃくちゃ分かりやすく、僕は伊野さんを追いかけていたから。  でも、叶わなさそうだしな。    圭……  何て友だち思いなんだ。僕に伊野さんを譲ってくれるなんて。  ありがとう。  僕はやるしかない。  この恋、叶えてみせる。  圭の分まで……!  それでいいのか分からないけど。  
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