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彼は、枕元に立って私を見下ろしていた。暗くて、表情が分からないけれど、たぶん憐れみの表情を浮かべていたと思う。だって、そのとき私はきっと、ゴミ捨て場に打ち捨てられたソフビ人形みたいだったから。
「この世が憎いか?」
彼は言った。なんだか、映画の悪役みたい。なんて、達観していたけれど、彼の静かで低い声を聞いたら、涙が止まらなくなった。嗚咽を上げて泣きじゃくる私を、彼は何も言わずにただ見ていた。
「な……で、私がこんな目に……なん……で……うう」
彼はただ、私を見ていた。カーテンが風に揺れ、月明かりが彼の顔を照らした。精悍な顔立ちに、血のように赤い目と二本の牙が見えた。
「……神様?」
フッと彼は笑った。それもいいかもな、と。そして、
「お前の願いをかなえてやろう」
彼の背中が変形して、ドロドロと赤褐色の粘土のようなものが溢れる。その肉塊は、翼を形作った。ああ、そうか。私の今までの不幸は、今日このときのためだったんだなって思った。
「みんな、死んじまえ」
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