第二話 ポチ

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 ポチは口をあーんして、指でひっぱって大きく開けた。綺麗な歯並びを見せたかったのではないとすぐに分かる。  だって、二本の鋭い牙が視界に飛び込んできたから。 「ほふはひんへんひゃあ……僕は人間じゃありません」  途中で気づいて指を口から外した。 「僕は人喰です」  赤い双眼がじっと私を見つめる。私も見つめ返した。一目見たときから、病室で会った男と同じ血の色の目を見て、人間ではないと気づいていたけど考えないようにしていた。 「うん」 「えっ、それだけですか!?」  ポチはあわあわしながら、『えっと、えっと他に何かないんですか……?』って聞いてきたけど 「何かって?」 「怖いとか、気持ち悪いとか……」  私はカーペットのひかれた床に胡坐で座り込んで、 「そう言われてもなー、べつになぁ」  私にとっては、人間が一番怖いし危険だから。 「食べられちゃうかもって思わないですか? こう、バクッと!」  ポチはバクッとの部分で、がおーと両手でポーズを取った。それが、 「ぷっ」 「な……なんですよ~もぉ~!」  不覚にも、ちょっと可愛いと思ってしまったのだ。 「君が私を食べる気だったら、私は今頃とっくに胃袋の中だよ」
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