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髭のおじさんに車で連れられてやってきたのは、小さな事務所だった。扉を開けると、三人の男女がいた。
入り口から近い順に、美人な女の人、眼鏡をかけた秋葉原とかにいそうなおじさん、そしてなぜか奥の方で、うつ伏せで倒れている男の人(年齢不詳)だ。
「おはようございます、部長! ……あ、新しく入った子ってこの子のこと?」
手前にいた女の人が、人懐っこい笑顔でこちらに近づいて来る。歩くたびに、よく手入れされた肩まで届くウェーブの髪が揺れた。
「アタシは桜井アイリ! アイリって呼んでねぇ~。よろしくね!」
「星川ミチルです。よろしくお願いします」
握手を求められて返したら、笑顔でぎゅーっと握られた。女性らしい柔らかい手で、少しひんやりしていて同性でもドキッとしてしまう。
「ミチル……ミチル……んじゃ、みっちゃんか!」
「へ?」
「よろしくな、みっちゃん。ワイは部長の蟹原や」
「あ、はい。どうもよろしく……?」
ここまで連れて来た髭のおじさんに、出会った初日にあだ名をつけられた。しかも部長って、結構偉い人っぽい。
「よろしくねー、みっちゃん!」
さっきの女の人まで……。このままだと、あだ名が浸透しそう。私もう十八歳だから、みっちゃん呼びはちょっと恥ずかしい。
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