大黒埠頭でKISSをして

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大黒埠頭でKISSをして

コンチネンタルホテルから数分、コスモワールド、カップヌードルミュージアム、赤レンガ倉庫、大桟橋、神奈川県庁に県民ホールをタクシーの車窓から見ながら私とシュウちゃんは山下公園についた。ここの付近にはニューグラウンドホテルやスターホテルといった大黒埠頭、ベイブリッジへ行くために一番近い場所だし、元町中華街駅で待ち合わせしても良かったんだけど、それはそれ。どうしてもわたしたちは夜、観覧車にも乗りたいためにコンチネンタルホテルにしたのだ。 「ありがとう」 シュウちゃんは運転手さんにそういうと、料金を払い、私と一緒にタクシーから降りた。ああ、マリンタワーが見える。山下ふ頭と呼ばれるこの場所からマリンルージュに乗ると大黒埠頭、ベイブリッジへ行ける。マリンルージュとは横浜港を一時間でクルーズするレストラン船である。山下公園(山下ふ頭、本牧ふ頭)からベイブリッジの見える大黒埠頭を通り、再び山下公園へと戻ってくるコースだ。 本来、全国的に有名なベイブリッジとは本牧ふ頭と大黒ふ頭をつなぐ橋。首都高速湾岸線も走ってたりする。 「今は午後2時。じゃ、行こう、梨沙」 「ん?」 「氷川丸の船乗り場の隣にマリンルージュの船乗り場あるからさ、山下公園からは少し歩けばつくから。午後2時半出航だから早く行かなくちゃ」 「マリンルージュって午後2時半って決まってるんだね」 「うん。マリンルージュってさ、デートにはもってこいのレストラン船だろ?俺、事前にネット予約したんだよね、ケーキプランセット。梨沙の為に」 「秀平...」 「早く行こうっ」 シュウちゃんにグイッと手をひかれて山下公園を後にする。 そしてしばらく歩いて、ついに、横浜港、マリンルージュが見えた。 英語でMARINE ROUGE とかいてある白くて美しい船に乗り、午後2時半に私とシュウちゃんは山下ふ頭を出航。マリンルージュの中はとても品のあるレストラン船だった。予約席と書かれた席に2人で座った。窓からは横浜港のスカイブルーの海と、みなとみらい21地区の街並みが見えてとても感動した。神奈川県民でよかったなあ。こんな素敵な県出身なんだ、私もシュウちゃんも。 「俺ってこう見えて小型船操縦免許持ってるから横浜の船のこととか詳しいんだよね」 「ああ、そういう資格持ってるって言ってたよね。なんで資格取ったの?」 「カッコ付けたかったっていうか。まあおなじ横浜市内でもみなとみらいのある中区とは違って港北区だから少しカントリーだけどさ。でもとりあえず横浜人なわけだから船を見ることも多かったし。何となく資格持ってたらいつか役に立つかもねってね」 あはは、と照れるシュウちゃん。 「もともとはサッカー選手になりたかったけど芸人として有名になれて嬉しい。でももしなににもなれなかったら小型船操縦士にでもなってたかもなあ」 こういう海でね、なんていうものだから今乗ってるマリンルージュも例外ではないのでは?、と思ったらなんとなく不思議な気持ちになった。横浜港で船の運転するシュウちゃんを思い浮かべたり。 そんなことを思ってたらケーキセットが運ばれてきた。お上品なショートケーキに大人な味のほろ苦いコーヒーのセット。ベイクルーズしながらのティータイム。なんて優雅で甘いひとときなんだ! 「なんかリッチだね」 「うん。せっかくの梨沙とのデートなんだもん」 彼の微笑みはもう反則ってくらい素敵で。 そんなとき窓から横浜ベイブリッジが見えた。もう大黒埠頭なのか!ベイブリッジ、大黒埠頭、なんて素敵な響きなんだろう。これぞ、THE YOKOHAMA。 「ねえ、シュウちゃん、みて、ベイブリッジと大黒埠頭っ」 窓からシュウちゃんに目をスライドさせた瞬間、唇を奪われた。 同じ船内に乗っていた客たちから「ヒューヒュー」とか「チューだよ」とか「よ、お二人さん」とか歓声とか冷やかしとかの声が!ついにはパチパチパチパチとの拍手とスタンディングオベーションまでされてシュウちゃんと私は 「ありがとうございます」 「ありがとうございますっ」 と2人そろって立ち上がって皆さまに挨拶した。 そして少し周りが落ち着いたのを見て着席。 「大黒埠頭に着いた瞬間キスしたかったんだ!」 「シュウちゃんたら」 恥ずかしいけど嬉しかった。
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