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プロローグ
「。。見つけた」
女性はそう呟いた。
今の時代にはそぐわない巫女姿の女性。
年は二十歳くらいであろうか。
一六五センチほどある身長に肩まで届くセミロングの髪。
しかしその鋭い眼光はただの女性ではない事を漂わせる雰囲気であった。
彼女の名前は刀祢聖菜という。
刀根神社というこの街に古くからある神社の神主の娘で跡取りだ。
「随分と好き放題やってくれたようだけど、今夜でおしまいにさせる」
聖菜の目の前には浮遊している幾つもの白い人魂のようなものが見えていた。
聖菜はそれには目もくれない。
それよりも人魂がまとわりついている一人の男の方を見つめる。
まるで惑星の周りを回る衛星のように人魂はその男の周りをぐるぐると周回している。
男の目が光ると聖菜の身体はビクッと動いた。
何かが飛んできた。
念なのか術なのかわからないが、それが聖菜の身体にぶつかってよろめいた。
「人魂がぶつかってきたのか」
男の念により身体を周回していた人魂の一つが聖菜に攻撃を仕掛けてきたのだ。
普通の人間であれば、今の攻撃で魂を抜き取られて死んでいたであろう。
だが聖菜にとってはこれくらい紙飛行機が体に当たった程度である。
「邪魔するな」
男の低く唸るような声が聖菜に届く。
「いつまでもこの世に彷徨っていられてはこちらも困るんでね」
「ならば死ね!」
男は聖菜に浮遊している人魂を飛ばす。
聖菜は腰に差していた刀に手をやり、鯉口を切る。
一つ、また一つと向かってくる人魂を刀を抜き、斬り落とす。
斬られた人魂は悲鳴のような音を立て、いくつもの光の粒となって消えていった。
「今度はこっちの番ね」
聖菜は剣を真上に上げて空中に四縦五横の格子を描く。
空中に格子型の糸状の線が現れて男の身体を捕える。
それは蜘蛛の糸に絡まれた獲物のようであった。
「何だと。。動けない。。」
「往生せよ」
聖菜が剣をひと振りすると男は悲鳴をあげた。
血飛沫ではない、青い液体があたりに四散し、男の身体は蒸発するように頭から首、胴体、足と消えていった。
「これでこの辺りも静かになるわね」
聖菜は何事もなかったかのようにその場を立ち去った。
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