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法元は美里が死んだ事を知らない。
もし結界から蘇った時に真っ先に狙われるのは美里に生き写しの聖菜であろう。
その時のためにも自分の身を守るための力はつけておいた方がいいであろうという判断も加わっての事だ。
太蔵は美里が命を落とした時の詳細を聖菜には話していない。
いずれ時が来たら話そうと思っているが、それをいつにするか決断がつかずにいた。
美里は強力な霊との戦いで何とか霊を封じ込めたものの力尽きたという事だけを聖菜は聞いている。
ハザマ真理教も狭間法元の事も知る良しもなかった。
月に二度の断食修行も聖菜は自分が選んだ道だと耐えていた。
空腹時には精神が研ぎ澄まされて霊力が上がる事も実際に体験している。
中学にあがってすぐのある夜の事、いつものように断食修行を終えて眠りにつこうと思っていると、部屋の中に一匹の猫が居るのが目に入った。
「あら? 可愛い猫。どこから入って来たのかしら?」
「ボクの姿が見えるんだね」
猫が喋ったので聖菜は驚きの声を上げる。
「猫が喋った!」
「初めまして。ボクは那由多。君のお母さん美里についていた式神猫だよ」
「お母さんに?」
「ボクは美里に聖菜をよろしく頼むと言われて来たんだよ。今までどこで何してたの? って言うと、君のすぐそばに居たんだけど君がまだボクの姿が見えるだけの霊力がなかったんだよ」
「そうだったのね。じゃあ今は那由多の姿が見えるだけの霊力が私についたって事ね」
「そう。だから式神も使えるようになっているよ」
那由多はそう言って首輪に付いている式札を取るように聖菜に言う。
式札を取った聖菜は不思議そうにそれを眺めた。
「般若と夜叉の絵が描かれているわね」
「それが式札さ。呼び出したい方の式札を持って念じれば式神が出てくる」
「式神ってこの二人だけなの?」
「この二人以外に美里には十二神将の一人である青龍という最強の式神が付いていた。青龍は今の聖菜の力じゃまだ呼び出す事は出来ないけど、美里と同じくらいにまで力をつければ必ず来てくれるよ」
「青龍。。そんな凄い式神をお母さんは使っていたのね」
それから聖菜は式神の使い方を那由多から教わり、太蔵の修行の成果もあって霊力がどんどんアップしていった。
自分でも力が上がって行くのを日々感じ取れるほどに。
そして十四歳になったのを機に聖菜は本格的に美里の後を継いで霊媒巫女として活動する事を決意した。
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