謎の女性

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謎の女性

「その程度なのね。それで本当に刀祢美里の娘なの?」 「母を知っているの?」 「直接会ったことはない。名前を知っているだけ」 女性はそれだけ言うと、気を失った女子高生について話し始めた。 「この娘はね、元々いじめられっ子で学校でいじめられた鬱憤を始めは虫を殺す事で晴らしていた。それがだんだんエスカレートして犬や猫になり、ついに人間を殺したい欲求にかられ霊体となってしまったというわけ。 この殺人願望の強さは彼女が味わったいじめの酷さの裏返し。 ここで抑えなかったら自分をいじめたクラスメイトたちを次々と消し去っていったでしょうね。 でも私に言わせれば仮にも霊媒師を名乗るならこれくらいの霊体は抑えて当然。あなたはこの程度も抑えられない未熟者よ」 女性の厳しい物言いに聖菜は返す言葉もない。 「あとは私の呼んだ特殊警備員たちが、警察と協力してこの子を然るべき施設に送るから」 「特殊警備員? あなたは一体何者なの?」 「それを知りたければ、私と修行をする事ね。さっきも言ったけど、今のあなたでは今日のように強い霊体が来たら手に負えないでしょう」 悔しいが、女性の言う通りであった。 全く顔も名前も知らない女性ではあったが、聖菜はこの女性から母に近いものを感じていた。 それが気なのか雰囲気なのかはわからなかったが。 今の霊体を一撃で倒した彼女から教われるのなら一つでも多くの事を吸収してやろうと思ったのだ。 「わかったわ。必ずあなたの正体を明かしてみせる」 それから聖菜と女性との特訓が始まった。 女性の用意してくれた警備会社の社員用道場で二人は互いに剣を持って対峙する。 聖菜は聖剣神楽だが、女性はいつも通りの居合刀。 剣だけ見れば聖菜の方が断然に有利であった。 聖菜は聖剣神楽を構えて気を高める。 だが目の前の女性は剣は持っているがだらんと両手を下げたままであった。 「なぜ構えないの?」 「このままで十分よ。遠慮なくかかって来なさい」 聖菜が攻撃を仕掛けるが、女性はそれを難なくかわして聖菜の背中に一撃を加える。 一撃と言っても軽くピシャリと叩かれる程度であったが、聖菜は自分の剣が通じない事に焦りを感じていた。 「甘いし遅い。そんなだからこの前程度の霊体にも歯が立たないのね。これじゃ強力な霊体に出くわしたらすぐに逃げた方がいいわ」 「く。。」 「もっと霊力を集中させて。それじゃただ剣を振っているだけ。何のための聖剣なの」 霊力を集中させようとすれば剣で弾かれ、剣で対応しようとすると霊力で飛ばされる。 剣と霊力を同時に使いこなせる人間が相手では 聖菜は成す術(なすすべ)がなかった。
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