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「滑稽な安物喜劇を演じさせられたような気分」
舞美は一応大役を果たした事になるが、やれやれ終わったという感想しか持たなかった。
一方の蓮香も何度か見た狭間法元の相変わらずの無愛想な表情にため息をつく。
「多分あの人、私たちを何とも思っていなんだね。あの人にとっては私たちは金儲けの道具か金づると言ったところかしら」
そんな独り言を言っていたところを背後から急に声をかけられた。
「何しているの?」
突然の背後からの声に蓮香は驚いて振り向くと、そこには蓮香より少し年上と思われる女性が立っていた。
「あなたは?」
「私は陽神美夕(ひかみみゆ)。今日からこの施設で職員として働く事になったんだ。あなたはここの院生? よろしくね」
「あ。。蓮香と言います。よろしくお願いします」
美夕は身長は一七〇センチほどはあろうかという、背の高い女性だ。
髪はセミロングほどの長さであったが、ポニーテールに結んでいて、眼鏡をかけ薄化粧でどこか印象の薄い感じがする女性である。
「あの。。もしかして今の聞いてました?」
「何の事? よく聞こえなかったけど。ま、たとえ聞こえたとしても私は教祖にいちいち報告なんてしないから安心して」
そう言うと美夕は手を振って蓮香の元を去って行った。
「やっぱり聞こえてたんだ。。でもなんか、不思議な先生。地味だし」
そこまで言って蓮香はすぐに気がついた。
「そうか、施設とはいえ教員なわけで、教員がそんな派手な化粧や洋服を着て来るわけがないか」
若い女の先生が来てくれたと知ったら特に男の子の院生は大喜びだろうな。
蓮香はそんな事を考えていた。
この時、蓮香はまったく気づいていなかった。
ここの教員であれば全員法元を「教祖様」と呼ぶはずだが、美夕は「教祖」と言っていた事に。
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