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ハザマ真理教編 三
横浜にある狭間真理教の教会に一人の女性が呼ばれた。
彼女にしか出来ないある特殊な任務を遂行するためである。
「神父様、お呼びでございますか」
「凛、ここから比較的近い場所に傀が出現しているとの情報を得た。すぐに調査に行ってもらいたい。無論、傀に出くわしたら浄化するようにな」
「承知しました」
宗像凛。十五歳。
身長は一五八センチほどの見た目は普通の女性であるが、彼女は雷神丸と呼ばれる宝剣を用いて戦う教団が「傀」と呼んでいる怪物退治のスペシャリストであった。
街に度々出現して人々を襲う傀に近隣住民は悩まされていた。
そこで狭間真理教に傀の退治を依頼したところ、効果は確実に現れていった。
宗像凛は地元では江戸時代からの有力者である宗像家で二人兄妹の妹として生まれた。
宗像家は寺を運営する家柄であったが、その一方ではお祓いや除霊を行う霊力を持つ家系でもある。
凛の持っている霊力は長男よりも優れていたので、先代当主である父は現当主と寺の住職に長男を、除霊をおこなう専門として凛を指名し、当家に伝わる雷神剣を凛へ継承した。
そして宗像家はハザマ真理教の依頼に応じる形で凛を教会に派遣して「傀」と呼ばれる怪物退治に協力する事となった。
凛は教会の近隣住民の間では救世主とまで言われるほど人気も人望もある女の子だ。
「凛ちゃん、また傀が出たらしいよ」
「そうみたいね。大丈夫、私が浄化させてくるから」
「頼んだよ。凛ちゃんだけが頼りなんだから」
凛は民家の立ち並ぶ通りを抜けて丘に向かう。
生暖かい風が吹く中、凛は何かがいる気配を感じ取っていた。
「いるな。。」
凛の持つ雷神丸が光を放ち始めた。
これは近くに敵の存在を感知した時に知らせる通知のようなものであった。
無論、剣自体に生命が宿っているわけでもそういう仕組みになっているわけでもない。
凛の持つ能力に剣が呼応して成せる技である。
「現れたな」
凛の前には髪の長い異形の怪物が立っていた。
「傀を浄化させるのは我が定め」
凛は雷神丸を抜く。
傀と呼ばれる怪物が凛に向けて襲いかかるが、凛はその突進をひらりと身をひるがえしてかわす。
凛の持つ宝剣雷神丸は江戸時代より宗像家に伝わる刀であるが、普通の者が手にしてもただの装飾が施された刀である。
凛は傀と呼ばれる怪物を浄化させる特殊な力の持ち主であった。
怪物は髪を伸ばして攻撃して来るが凛は緩やかな動きでかわしていく。
鋭い爪の攻撃も彼女にとっては涼風のようだ。
普通の人間ならどれも食らったら一撃で骨が折れ肉が裂けるであろう強力な攻撃であったが、凛には通じない。
「御仏の名のもとに浄化されよ」
凛が雷神丸を一閃させると傀の身体は斬り裂かれ、悲鳴とも叫びとも取れる声を上げて倒れた。
「浄化完了」
凛が傀を打ちたおすと教会の使徒が三人駆けつけて来た。
この三人は凛の倒した傀の後始末をするために常に凛の後ろに待機している者たちであった。
「凛様、お疲れ様でした。後は我々が対応致します」
「頼みます」
凛は使徒たちに任せてその場を立ち去る。
「あの連中、私がちゃんと傀を打ち倒すか検分も兼ねているからな。始めはやりづらかったがもう慣れっこだな」
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