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「実験台をここへ」
そう言われて連れてこられたのは蓮香の一つ下のクラスである生駒舞美であった。
「何をするのですか?」
「大人しくしていればすぐに終わる」
舞美は恐怖で体が震えていた。
入学するなりいきなり教員に呼び出されて、何の用事かと思って職員室に入るなりいきなり背後から麻酔薬を嗅がされて眠らされ、気がつけば手術台の上に手足を縛られて寝かされているのだから。
「助けて。。助けて下さい」
舞美の周りを十人の医療服を着た医師と思われる人物たちが囲い込んでいる。
「心配するな。この手術が終われば君の能力は今の十倍。いや、二十倍にはなるだろう」
「そんなのいいですから。帰して下さい」
舞美の嘆願を無視するようにリーダーと思われる医師が命令を下す。
「やれ!」
舞美の左腕に注射器が刺されて、しばらくすると舞美は苦しみ出した。
「ああ。。」
爪は鋭く伸び、髪の毛は針金のように固くなり、手足を縛っていた縄は引きちぎられる。
「成功だな」
医師たちが舞美に注射器で注入したのは「ハザマ幼虫」と呼ばれる寄生虫であった。
これが腕の血管から脳に到達すると身体に変化が来て傀と呼ばれる怪物に変身する。
そのパワーは成人男性の二十倍以上。
鋭く伸びた爪は鉄をも切り裂き、髪はピアノ線のように細く丈夫な材質となる。
髪を変幻自在に操って相手を絞め殺す事も可能である。
「ふふふ。ハザマ幼虫の実験はまだまだこれからよ。今後進化させればさらにパワーアップして、いずれは最強の軍隊を作る事も出来るだろう」
「が。。が。。」
傀にされてしまった少女はハザマ幼虫に脳を支配されて操られてしまうのだが、舞美は強靭な精神力の持ち主であった。
必死で脳の中にいるハザマ幼虫と戦っていた。
そしてついに医師たちが予期すらしなかった事態がおこる。
「助けて。。」
舞美の言葉に医師たちは驚きの表情を浮かべる。
今までハザマ幼虫に脳を支配されてなおも自我を保てた少女はいなかったからである。
「うわあああ」
舞美は心の中でここから逃げなきゃと考えているとハザマ幼虫がそれに呼応する。
この幼虫はある程度意志の強い人間には従順になる性質があるようだ。
これまでの実験では見られなかった新たな発見であったが、現場の医師たちはそれどころではなかった。
「取り押さえろ!」
医師たちの声に警備兵たちも駆けつけるが、舞美は強靭な脚力で一気に警備兵たちの頭上を飛び越える。
「追え! 逃すな」
怒声が飛び交う中、おそらくはどこかの施設であろう研究所と思われる建物の中を走る舞美。
出口と思われるドアを鋭い爪で切り裂くと、そのまま外へ逃亡していった。
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