ハザマ真理教編 四

1/3
前へ
/107ページ
次へ

ハザマ真理教編 四

学園生活が始まって早々に生徒たちの間に噂が広まっていた。 「乙組の生駒舞美が入学式の翌日から行方不明になっているらしいよ」 「生駒って入学式で挨拶文読んだ子だよね」 「まさか初日で学校が嫌になっちゃったとか?」 そんな話があちこちで飛び交う中、蓮香は素知らぬ顔で普段通りに出席して授業を受けている。 昨夜の事であった。 「舞美、こっちよ」 研究所を飛び出して来たものの、行くあてもなくふらふらと歩いていた舞美であったが、突然声をかけられて振り返ると施設で見覚えのある顔であったので、思わず抱きついた。 「蓮香先輩! 私。。」 「言わなくていいよ。おおよその事情はわかっているから。可哀想に。舞美もハザマ幼虫を埋め込まれたのね」 蓮香の言葉に舞美は驚く。 「どうして知っているの? まさか先輩も?」 「私はハザマ幼虫を埋め込まれた少女たちを救うためにここに住んでいるの」 「えっ? 先輩は何者なの?」 「私はちょっとした気功術を使えて、私も気を使って体内から幼虫を腕にまで誘導して取り出す事が出来るの。ハザマ真理教の実験を知ったのは一年前。私は自分にしか出来ないこの気功術で傀と呼ばれる怪物にされてしまった子たちを助けようと施設と教団に見つからないように影で動いているのよ」 「そうだったんですね」 蓮香は物心ついたときから自分の不思議な力を自覚していた。 この学園を出たら人の役に立つような仕事がしたいと思っていた彼女は密かにこの力を伸ばすための修業をしていたのだ。 だが、そんなおり狭間法元の考えや幼虫の事を知り嫌悪感を抱いた。 きっかけは中昭夫であった。 昭夫という人物は舌先三寸でハザマ商会の課長に上がった人物である。 口も軽いが頭も弱く、こんな場所でこんな事を話したら誰が聞いているかわからないなど考えのおよぶ人間ではない。 調子良くペラペラとハザマ幼虫の実験の事を部下たちに話しているのを蓮香は偶然聞いてしまい愕然とする。 私は今までこんな人物に付いていたのかと。 それから法元に対する見方考え方が変わり、表向きは大人しくて従順な生徒を装いその裏で法元に逆らえるだけ逆らってやろうと決意したのだ。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加