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「あの幼虫はハザマ心理教が作り上げたもの。取り出すには少し時間がかかるけど、今まで全員無事に助けられているから。舞美に埋め込まれた幼虫も取り出してあげるよ」
蓮香の言葉に舞美はしばらく考えていた。
「先輩、私は自分に埋め込まれたハザマ幼虫を自分でコントロール出来ると思う」
「舞美?」
「私はこの能力であいつらを潰してやる。こんな風にされるのは私で最後にするんだ」
「一人じゃ無理よ。ハザマ真理教は信者が一万人以上いるのよ。その全員が狭間法元に心酔している訳だから一万人を相手にするようなものよ」
「でも、このままじゃまた私のように怪物にされてしまう人たちがたくさん出てくる。私は戦うって決めたんだ。幸い私には身寄りもないし、いなくなっても誰も悲しむ人もいない。怪物にされた時点で死んだと思って、この命は狭間法元との戦いにかける」
蓮香は驚いた。
生駒舞美という子と会ったのは昨日が初めてで、当然その人となりを知らない訳だが、こんなに強い意思の持ち主だとは思っていなかった。
これまでハザマ幼虫を埋め込まれた少女たちはみんな自我を失い凶暴化していた。
自分でコントロール出来るなんて人も初めてであった。
この意思の強さがハザマ幼虫を従順させるのだとしたら蓮香にとっても新たな発見であった。
だが、いくらハザマ幼虫の力で怪物の力を身につけたとは言え、一人では危険な事には変わりはない。
特に横浜の教会が雇っているあの人物は。
「舞美、一人要注意人物がいるから気をつけて。宗像凛。ハザマ真理教が雇った怪物専門のハンターのような人よ。彼女もハザマ真理教に利用されている一人だから味方につけたいんだけど、今は出会ったら逃げた方がいいわ」
「宗像凛。。」
「彼女の宝剣で斬られたら本体であるあなたも死んでしまう。そうして助けられなかった子たちが何人もいたの。もちろん凛に罪はないわ。彼女も裏事情を知らずに怪物の浄化と称してハザマ真理教に利用されているんだから。もし真実を知ったら罪の意識に苛まれるでしょうね」
「そう、その子も被害者なんですね」
「私は医療から助ける事は出来るけど戦う事は出来ない。でも必ず味方を連れて行くからそれまで無茶しないで。それから私の事を蓮香って呼んでくれていいよ。敬語もなし。別に施設に長くいるってだけで偉くもないし年だって一つしか違わないし」
蓮香がそう言うと舞美にようやく笑顔が見えた。
「蓮香。。わかった、色々ありがとう。私はしばらく施設の同級生たちの前から姿を消すわ。関係ない人たちまで巻き込みたくないから」
「そうね。当分はうちで過ごすといいわ。うちならハザマ真理教にも見つからないから」
「家? 蓮香って家があるの? ハザマ学園にいる院生は全員孤児で全寮制って聞いていたから帰る家のある院生はいないと思っていた」
「家と言っても私の家じゃないけどね。お世話になっている人の家だし、良い人たちだから安心して」
こうして舞美が蓮香に連れられて行ったのは築数百年は経っているかという古い神社であった。
「刀根神社?」
「ここの神主さん。厳密に言えば先代神主さんと今の巫女さんは不思議な力を持っていてね。私の力もここで修行してレベルアップさせたのよ」
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