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ずだ袋の底を引きずって、汚れ破れ越える峠道。中身は砂。重たかった。それが僕が歩いた通りに細く一筋、紛れた雲母がきらきら陽光を跳ね返し、遠くの方で風に舞う。
もうひと息で下りに入る、てっぺんまでのあと数十メートル、急に軽くなった。とうとう袋の底が抜け、ごっそり落ちた砂がさらさら、坂を滑ってもとの場所へ。続いた日照りに乾ききってせっかく集めたたからもの、雲散霧消。散り散りに。鈍く振り向き力なく「ああ」と呻いた。
投げ捨てようにも気が引けて、破れた大きな空袋を肩に掛ける。さっさと歩こう、手ぶらだし。それでもああ、困憊にめり込む足。ここは夕立ちあったかい?ぬかるんでるよ。動けない。ひぐらし鳴いてる休もうか。ずだ袋のベッド、棺桶。死ぬなら墓掘りしたいな。少し眠ればまた歩けるさ。オッケーオーライ悪くない。
良くもないけど。
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