パーティ、パーティ。

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 ***  彼女――アヤミは五年生で、よその学校から転校してきたんだったわよね。  あんたは五年生の秋に転校していったけれど、それでも大体は知ってると思うわ。 「あの、皆さんこんにちは。あたし、森アヤミっていいます。よろしくお願いします!」  長いサラサラの黒髪が綺麗な、いいところのお嬢様。そんなかんじの女の子だった。  お嬢様といっても、どういう家の子なのかは知らなかったわ。ただ、護衛というより、まるで監視するように執事っぽい人が彼女を送り迎えしていたことは知ってる。おっとりした田舎の町だったのにね。まるで誘拐されると決めてかかっているみたいで、ちょっと感じ悪いなと思っていたわ。  最初、私達はあの子のこと、少し変わり者のお嬢様だとしか思ってなかった。大人しくて、休み時間はずっと本を読んでいて。それでも他の子に遊びに誘われたらにこにこついていって、特に感じが悪いとかそういうわけでもなくって。ただ、あんまりにも美人なものだから、男の子たちもドキドキしちゃってちょっと遠巻きにされていた感はあるかしらね。  友達になれると、そう思ってたわよ。クラスの、他の子と同じようにね。  自慢じゃないけど私は友達は多い方だったし、彼女とも他の子と一緒に遊べるとばかり思っていたの。でも。  何かがおかしいと、そう思うまで時間はかからなかったわ。 「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」 「え!?」  ある日、クラスの女の子の一人が階段から転落してしまった。私はごろごろころがりながら滑り落ちてく彼女を偶然目撃してしまったの。 「痛い、痛い痛い痛い痛いいいいいいいい!足、足が、足いいいいいっ!」  派手に転がって、足を変な方にぶつけたせいで、彼女は酷い骨折をしてしまっていた。踊り場で、右足がありえない方に曲がっているのを見た時は頭が真っ白になったわ。  そんな時、真っ先に少女に駆け寄ったのがアヤミだったのよね。 「大丈夫?」 「ひ、ひいっ!?」  声をかけたアヤミに、何故か彼女は怯えていた。傍に走り寄った私は聞いてしまったわ――彼女とアヤミの会話を。 「あ、あ、アヤミ、ちゃ……今、わたし、突き落と……」 「なんのこと?あたし、なんもやってないわ」 「う、嘘!だって……」 「ほら、なんもやってないわ。早く先生を呼ばないと」 「ぎゃあああああああああああああああああっ!」  彼女は笑顔で、折れたその子の足を触った。途端、痛みが増した彼女が凄まじい悲鳴を上げていた。それを見て、聞いて、アヤミはにこにこ笑っていたのよ。  先生に助けて貰わなきゃ、なんてことを言いながら。  ……ええ、そうね。それは、あなたも知っていたのだっけ。  そうよ、私はそれ、一部始終を目撃してしまったの。  アヤミが本当に突き落としたのか、その時はわからなかった。確かにあの子と一緒に荷物運びをしていて、隣に立っていたのは事実。でも、突き落としたところをはっきり見たわけじゃない。証拠なんて何もなかったでしょうね、周囲に他の子はいなかったし、うちの学校は防犯カメラなんてものもなかったし。
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