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ただ、私はその時点で嫌な予感がしたの。アヤミの笑顔が、彼女をちっとも心配しているように見えなかったから。
それからも、クラスでは奇妙な事故や事件が多発したわ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
女の子が、トイレで悲鳴を上げた。便座に理科室から持ち出した塩酸がべったりと塗られていたせいで。
「痛い、痛い、痛いっ!」
男の子が泣き叫んでいた。上から割れた蛍光灯が降ってきたせいで。
「うげえええええええ、えええええええええええええええええええええええええええええええ!」
女の子が給食を食べて嘔吐した。――いつの間にか、彼女のうどんの中にたくさんの毛虫が入っていたせいで。
犯人は用意周到だった。誰がやったのか、簡単にはわからなかったわ。アヤミは多少不審な行動をしていたけれど、カメラがないこと、小学生であること、心配するような言動でうまくカモフラージュしていたわけ。
でも、そう、そうよね。あんたも気づいていたわよね。あの子がきっと犯人だろうってこと。だってそうでしょう?誰かが悲鳴を上げて苦しんでいる時、痛がっている時。あの子は“大丈夫?”なんて言いながら笑ってるんだもの。まるで、誰かが痛がるところ、苦しがるところを面白がっているとでも言わんばかりに。
世の中にはいるのでしょうね。人が苦しむのを見るのが楽しくてたまらない、うまれついてのサイコパスというものが。
アヤミはまさしくそれだったと思うわ。
私も他の子も、先生にアヤミのことを何度も相談したの。でも、いかんせんアヤミって優等生だったのよね。全然先生の前ではシッポを出さなかった。それに小学生って、法律で裁ける年齢でもないでしょう?先生からすると、私達にアヤミがいじめられている可能性もあるし、慎重になるしかなかったんだと思う。
アヤミから話は聞いたようだけど、それだけだった。むしろ、アヤミの所業がどんどん酷くなるだけだったの。
だから……そう、ここから先は、あんたも知らない話ね。転校した後だったでしょうから。
クラスのみんな、彼女はこのままクラスにいたら――いえ、学校にいたらもう何もかも駄目になっちゃうと思ったの。だから、みんなで彼女にお願いしにいったのよ。
「お願いアヤミちゃん、もうみんなに酷いことしないで!」
「お願い!」
「もう、痛いことか、怖いこととかあったら嫌なの……」
「本当に迷惑してるんだ、もうやめろよ!」
「いい加減にして!」
「やめないなら、この学校出て行って!」
当たり前だけど、生徒がそうお願いしただけじゃ、一人を学校から追い出すなんてできるはずもない。
でも先生に頼んでも駄目なら、自分達でお願いするしかないって思ったの。この時の私達は、警察に頼るなんて発想はなかったのよね。否、警察を頼ったところで、小学生の彼女をどうこうしてもらうことはできなかったのかもしれないけれど。
で、何が起きたかというと。
「……ごめんなさい。あたし、そんなつもりじゃなかったの……」
彼女はしくしく泣きだしてしまったわけ。
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