再会

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「やっぱり馬鹿だった。大馬鹿。ふつう着いていくかな。」 寮に戻ってから、それはもう散々な言われようだった。 しかしそれも仕方がない。 強引だったとはいえ、着いていった事実に変わりはないのだ。 ソファに寝転がって重たい体を休ませながら、何とか返事をした。 「ごめん…。気づいたらお店に引きずり込まれてて…。」 「しかも出された酒を素直に飲んだって?」 「カフェオレだと思ったんだ。」 「ああ、カルーアだね。甘かったでしょ。」 「…何でお酒知ってるの。」 「今はその話やめとこ。」 これは、飲んでるな。 問い詰めたい気持ちにはなったが、それよりも今は自分の心配をしなくてはならなかった。 さっきから気分が優れない。それに、眠気が襲ってきて今にも寝てしまいそうだ。 原因はもちろん、初めて飲んだお酒のせいだろう。 「赤月、ごめん。」 「それは何度も聞いたよ。」 「違くて。…気持ち悪い…、すごい眠い。」 自分のところで寝ろと言われたが、そこまでの道がやけに遠い。 中々動けない俺を見かねてか、赤月が俺の近くまで寄ってきた。 何だろうかと待っていると、背中と脚裏に手を回し、俺を持ち上げた。 「え!あの、赤月…!」 「言うこと聞いて。ここで寝て、もし吐かれでもしたら俺が困る。」 それはそうなのだが…。思わぬ赤月の行動に動揺が隠せない。 言われた通り大人しくしてみるが、そうすると、彼の掌の熱や心地の良い体温に意識がいってしまった。 島の触れた手なんかよりも、ずっと気持ちが良い。 それに、どこかホッするような感じがした。 (この感じ…なんだろう、すごく落ち着く。) 夢現の中、ベッドに下ろされたのが分かった。 離れていこうとする熱をどうしても手放したくなくて、必死にすがった。 ああ、そうだ。 俺は、この大きな腕の中を知っている。 この優しい温もりを知っている。 でも、それはどこでだった?
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