再会

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いつもとは違う布団の香りに、目が覚めた。 しばらくボーっとしていたが、その花のような香りが布団ではなく、赤月のものだと気づき、慌てて距離を取った。 赤月はもう起きていて、呆れたような顔をして俺を見つめた。 「やっと起きた?ちかちゃんが全然俺のこと離さないから、諦めてここで寝たんだよ。 もしかしてちかちゃんって寂しんぼだったりする?」 そうだ、昨日はベッドまで運んでもらったんだ。 でも今はそれどころではなかった。 あの夢…いや、あれは記憶だ。 俺と赤月の、想い出だ。 大好きな人が目の前にいる。 ずっと会いたかった。 ずっと待っていた。 「斗真…!」 愛おしい、哀しい、懐かしい、嬉しい。 色々な感情が一気に溢れて、抱きつかずにはいられなかった。 「ちょ、待って。離して。」 無理矢理腕を解かれ、珍しいものでも見るかのような目で俺を見る。 「…泣いてんの?」 言われて気づいたが、自分の目からはボロボロと涙が溢れていた。 でも、それも仕方ないだろう。 感情が昂っていて、頭もぐちゃぐちゃだ。 「少し落ち着いて。何でいきなり名前なんかで呼んだ?」 まるで何かを探るかのように覗いてくる。 どうしよう。 本当の事を言ってしまおうか。 いきなり前世の記憶を思い出したなんて言ったら、『変な奴』だと警戒されてしまうだろうか。 それでも構わないから言ってしまいたい、というのが本音だ。 でも、自分の中でさえまだ整理がついていないし、変に口走って困らせてしまうのも本意ではない。 中々答えない俺を気遣ってなのか、赤月は未だに止まらない涙を拭ってくれた。 昔も今も変わらない、優しい手だ。 「……えっと、寝ぼけてたみたい。」 それだけ言うのが精一杯だった。 「…そう?平気なら俺もう行くよ。」 「うん。昨日から色々ありがとう。」 部屋から出ていく赤月の背中を見送りながら、声を殺してまた泣いた。
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