再会

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◆◆◆ 昔の記憶に取り乱してしまったその日、登校しようかどうか迷ったが、結局は無理矢理にでも行くことにした。 逆に気分転換になるかもしれないと思ったのだ。 せっかくだから、購買の自販機でお気に入りのミルクココアでも買っていこう。 出来るだけ笑っておこう。 ひとまずは、ごく普通の日を過ごそうと試みた…のだが。 「あのなぁ、『何もない』って言うんなら、その目の見事な腫れっぷりは何なんだ?」 教室に入ると真っ先に亜希に問いただされてしまった。 亜希曰く、『お前は朝から飲み物なんて買ってきたこともねぇし、声の調子も違う』らしい。 どうやら違和感は隠せなかったようだ。 他のクラスメイトは何も気づいていなさそうなのに、さすが友人だなと感心してしまった。 「映画だよ。昨日観てたんだ。」 「へぇ?」 亜希の目が冷ややかだ。 バレバレの嘘だってことくらい分かってる。 友達に嘘を吐かれて、亜希だって良い気はしていないだろう。 でも、だからと言って本当のことなんて言えるはずがない。 「まあ、別に言いたくなければいいけどさ。」 ぽつりと零しながら、机に気怠げに寄りかかる。 「お前、そういうところあるぜ。」 「…どういうところ?」 「当たり障りのない接し方してくる感じ。あまり他人からの関心を持たせないようにしてるっつーか。そのくせ妙に世話焼きなんだよな。」 そう言われてドキリとしてしまった。 確かにそういう節はあると思う。 「総合して、イイ子ちゃんでいようとしてるように見える。」 「…マジか。そう見えてたの。」 「俺はな。たまにムカつく時がある。今がそれ。」 図星を突かれたと思った。 キツい言い方ではあるけど、これは彼なりに心配してくれているのだろう。 それは素直に有り難かった。 「なんかごめん…。話したくても今は話せないんだ。」 「いつかは話してくれるつもりなんだ?」 「うん、いつかは。」 なら良いか…と小さく笑う亜希に益々罪悪感が湧いた。 『前世で恋仲だった人と再会した』なんてこと、いつになったら話せるか分からない。 もしかしたら一生無理なのかもしれない。 それでも亜希とずっと友人でいたいと思う自分は、きっと欲張りだ。
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