再会

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穏やかな日曜日の、陽が落ち始めた頃。 部屋替えをした初日からルームメイトの赤月が見当たらず、妙な責任感からとりあえず校内を探そうとウロウロしていた時だった。 学園門の近くの小さな茂みから細々とした唸り声が聞こえた。 何だろうと恐る恐る覗けば、そこはまさに修羅場だった。 呻きながら地面に突っ伏す男の人が二人ほど、見たことのない顔だ。 そしてその近くに立つ長身の男の人。 茶色の髪はハーフアップにされていて、その間から大きめのピアスが見えた。 綺麗な顔をしているのに砂らしきもので少し汚れているようで、口元やら頬やらを拭いつつこっちに気づいて振り返った。 ばちっと目が合った。 その瞬間、お互いに息を呑んだのが分かった。 俺はきっと、この人を知っている。 …いや、でもどこでだっけ? 同じ学園だからすれ違うことはあると思う。 けど、そういうのとは違うような。 ぐるぐると色んなことを巡らせていると、その男の子は視線を外してしまった。 そこで俺もやっと我に返った。 「ちょっと、あの、君たち大丈夫?何があったの?」 動揺しながらも駆け寄ろうとしたが、それよりも早く茶髪の男の人が俺の方にスッと近づいてきた。 「ここ離れるよ。」 それだけ言うと、俺の手を引いて逆方向へ引っ張った。 彼の手はザラザラしていて、たぶんだけど砂が付いているらしかった。 「待って…!あの人たちはあのままでいいんですか?もしかして喧嘩?」 「そんなところ。あいつ等はここの生徒じゃないから放っとけば勝手に帰るよ。」 「え、なんで…。」 『他校の生徒がここに?』と続けようとしたところで、それよりも彼の腕に切り傷を見つけてしまい、そっちを優先することにした。 「腕、怪我してますよ。保健室行きましょう。」 「ん―?平気だよ。」 「ダメ、行きましょう!手当はしないと。」 「だから平気だって。」 声が穏やかで言うことを聞いてくれそうな雰囲気があるのに、実際には全く聞く耳をもってくれない。 これは押し問答になってしまうと思った俺は、一か八かに出た。 「寮長にこのこと言っちゃいますからね。厳しい、怖いで有名な壬生って奴なんですよ、今年度から。」 「…それは面倒だな。オーケー。ただし保健室は行かない。部屋でやる。」 わずかにしかめっ面をして、渋々と言った感じで俺に同意した。 寮の入り口が近づいてきたところで、彼はやっと歩く速度を落とした。 「部屋、何階?あんたの部屋でやろう。」 こっちを見ずにそう言ってエレベーターに乗り込む。 「えっと…8階。」 そう応えれば、訝しげに一瞬俺を見た。 どうしたんだろうと思ったが、すぐに目をそらされたので黙っていることにした。 8階に着いて、今日移動してきたばかりの部屋の前まで向かう。 途端、彼はいきなり足を止めた。 「…805?あんた、もしかして壬生が新しく来るって言ってた奴?」 「…え、じゃあ君が赤月?」 しばらくの間、二人の間に沈黙が流れた。
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