再会

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「どおりで、8階って聞いた時にこの階では見たことない顔だなって思ったんだよなぁ。」 部屋に常備されている救急キットを横に置いて赤月の腕を消毒する俺を見つめながら、こっちを観察するように見てくる。 「名前は何て言うの?」 「七海 千景。」 「へぇ。じゃあ、ちかちゃん?」 「女の子みたいだからそう呼ぶのはやめて。」 「可愛いじゃん。」 赤月はそう言って笑ったが、ただ口角が上がっているだけで目は笑っていない。 変なあだ名に決まってしまう前に話を逸らそうと、あの男の人たちの事を聞いた。 「さっきの人たち、何でここまで来たの?他校の人なんだよね?」 「んー?俺のことが好きなんだろうね、きっと。」 「喧嘩?」 「そんな訳ないじゃん。お友達だよ。」 声色も表情も変わらないが、やっぱり目は笑っていない。 「…お友達にしてはヤンチャだね。」 「そうなんだよね。元気が有り余ってるみたい。」 ダメだ…分かりやすい嘘を吐いてくるところを見ると、全く話す気はないらしい。 まあ、初対面の人に素直に話してくる人の方が珍しいか。 やっと包帯も巻き終わり、救急キットを片付け始めた。 赤月は繁々と巻いたところを見ている。 「ありがと。手慣れてんね。」 「俺、弟がいてよく面倒見てたから。」 「なるほど、面倒見が良いタイプってことね。…壬生も人選考えたな。」 随分と含みのある言い方だ。 赤月は立ち上がりながら言葉を続けた。 「先に伝えておくけど、これから俺には関わらないって約束してくれる? 俺はいないものだと思ってくれていいから。」 突然の言葉に目を見開いた。 言い方も何だかムカついて、思わず言い返してしまった。 「ヤダね!約束しない。」 今度は赤月が目を見開いた。 「…前の人は素直に聞いてくれてたんだけど。ちかちゃんって結構頑固なの?」 「違う、なんかムカついたから言うこと聞きたくないだけ!あと壬生との約束もあるし。」 「…買収済みかよ。」 ぽつりとそう言うと、背を向けて自分の部屋に向かって行ってしまった。 「俺はちゃんと関わるなって言ったからね。後はちかちゃんの責任でよろしく。」 捨て台詞のように吐いて行った赤月の後ろ姿を睨みつける。 なるほど…もしや赤月は穏やかそうな話し方はするが、実は腹黒いタイプなのか。 壬生の手前、すぐにギブアップはしたくないがちょっと自信が無くなってきた。 これから俺たち、上手くやっていけるのだろうか。
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