再会

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◆◆◆ 部屋の引っ越し作業も全て落ち着き、ついに新学期が始った。 新しいクラスは、赤月も同じだった。 授業にはたまに顔を出すだけで、あまり教室にはいない。 そのたびに『帰ったら注意してやる』と意気込むが、赤月は部屋にいることも少なかった。 探しに行ったりもしてみたが、ほとんど見つけられない。 たまに見つけられた時は、大抵木陰で寝ていることが多かった。 そんな時は、起こすのは無粋かと声をかけずに放置していたが、どうやら気づいていたようで、ついに小言を言われてしまった。 「ちかちゃんさ、結構俺のこと探しに来てるでしょ。」 ある日、朝ご飯を食べていたら、のっそりと自室から出てきた赤月が開口一番に言った。 今日は平日で、これから普通に学校があるのにまだ制服を着ていない。 少し長めの髪は一つにまとめられていて、毛先に寝癖がついていた。 どうやら寝起きらしく、今のところ登校する気はないらしい。 「…バレてたの?いつも芝生の上で寝てるからてっきり気づいてないもんだと…。」 「物音に気づけないほど外で爆睡しないよ。」 赤月はキッチンで水を注ぎながら、まだ眠た気にしている。 「いい加減ストーカーするのやめてくれない?」 「…じゃあせめて教室には来てよ。 同室だからプリント頼まれたり伝言頼まれたりする俺のことも考えてほしい。」 「そういうのは無視していいよ。どうせテストは満点取れるから。」 さらりとそう言ってのける赤月にイラっとした。 自慢している感じではなく、事実をただ言っただけのような言い方だ。 「でも出席日数はやばいでしょ?赤月っていつもどこか行っちゃうけど、何してるの?」 そう聞くと、赤月はコップを置き俺の方へ近寄ってきた。 その目は冷ややかで、思わず体が強張ってしまった。 聞いてはいけなかったのだろうか。 身長も高い上、切れ長の目のせいでさらに迫力がある。 「知ったところでどうするの?何にも変わらないよね。 でもそうだな、そんなに気になるなら一つだけ教えてあげる。」 ふと伸びてきた赤月の手が、俺の唇を優しくなぞった。 驚いて体を引いて逃げたが、今度は首筋に手を伸ばしてきてするっと撫でる。 くすぐったくて、身をよじらせて何とか逃げた。 「な、なに!」 「分からない?初心だなぁ。ならこれ以上は知らない方がいいよ。」 赤月はにっこりと見事な作り笑いを向けた後、混乱する俺を置いてさっさと部屋から出て行ってしまった。
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