再会

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俺の通っているこの全寮制の高等学校は、市街地から少し離れた場所にある。 かと言って行きにくい訳ではなく、歩いて10分弱もすれば、直ぐに賑やかな街が見えてくる。 生徒達は、放課後になるとここまで来てジャンクフードを貪ったり、ショッピングをしたり、思い思いに過ごす事が多い。 寮には夜の8時までに帰っていればよくて、もし時間を過ぎる時は寮監に連絡をしなければならない。 今日は思いつきだったし、誰にも何も言わずに出てきてしまったからバレたら寮監と壬生からこっぴどく怒られるだろう。 「どこ行ったかな…。街まではこの一本道だし、まだそう遠くまでは行ってないと思うんだけど。」 しばらく辺りを見渡しながら赤月を探す。 コンビニもスーパーもビルも、灯りと音が賑やかでちょっと煩いくらいだ。 居そうな所を見当つけて覗いてみるが、中々赤月は見つからない。 15分程彷徨っても見つかる気配がせず、若干諦めかけたその時、あのパーカーが視界の隅に入った。 「あ、赤月…!」 思わず声をかけそうになり、慌てて口を閉じた。 そうだ、バレちゃいけない。 絶対に怒られる。 聞こえてないよな…?としばらく様子を見ていて、ある事に気付いた。 赤月の隣に立つ、スーツを着た男性。 最初は、ただ横を歩いているだけの通行人かと思っていたのだが、どうやら赤月の連れっぽい。 何やら会話をしている。 (知り合い…?) だとしたら誰だろうか。 スーツということは、社会人なのだろう。 アイツにも頻繁に会う程仲が良い人がいたのだとしたら、それは喜ばしいことだ。 単純に、『同級生とはウマが合わないからこうしている』が答えだったのだろう。 こうやって後をつけるようなマネをしてしまい、心が痛んだ。 (…帰るかぁ。) 踵を返そうとした時、スーツの男性が赤月の腰に手を回すのが目に入った。 何となく気になって、しばらく観察してみる。 男性の手は、赤月をどこかに促しているようだった。 まあ、仲が良い間柄ならスキンシップくらいは取るだろう。 でも、行き先が怪しい。 段々人気のない方へ歩いていく。 二人の後を着いて行ってみると、真っ暗な路地裏に入っていくのが見えた。 (え、これはもしかしてマズかったりする?) 遂にはお店とお店の間の、薄暗くて人目につきにくい場所へ消えて行った。 どうしよう、どうしよう…! やっぱり何か危ない事をしてたりするのか? ここまで来て何もしないで帰るのは男らしくない。 とりあえず確認するだけ…と、恐る恐る覗くと、 スーツの男性が赤月に覆い被さっていた。 それを見た瞬間、思わず飛び出してしまった。 「赤月…!」 二人が同時にパッとこっちを見た。 「あんた、何してるんですか!」 スーツの男性が、ポカンとした顔で俺を見つめてくる。 「…えーと、当麻くんの友達?」 「そ、そうです。こんな所に連れ込んで一体何を…。」 そこまで言った時、頭に強烈な痛みが走った。 もちろん叩いてきたのは赤月だ。 そっちを見やれば、無表情のまま俺を睨んでいた。 正直、すごく怖い。 「…島さん、ちょっとコイツと話があるんで今日は解散で良いですか。」 島、と呼ばれたスーツの男性の返事を待つことなく、俺を引きずるように引っ張ってその場を離れた。
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