1人が本棚に入れています
本棚に追加
1
とてもきれいな、鳥を見た。
目が、見たこともないようなつぶらな黒さで。
トサカあたりの白い毛が、ひゅっとはねあがって。
窓の外を、掠めるようにしゅっと通り過ぎただけなのに
わたしはご飯のこともどうでもよくなるくらい、心を奪われてしまった。
あの美しい鳥は、どんなものを食べるのかしら。
わたしは動物が何を食べるか、よくしらないけれど
このあたりにはいない鳥だから、食べる物もつまらない物なんかじゃないはずだ。
わたしは鳥がまた窓の外を横切らないかと、ずっと同じ場所で外を見つめていた。
でも
いくら待っていても、美しい鳥は戻ってこなかった。
待っているのに。必ずまた来るはずなのに。
おかしい、とわたしは思った。
ずっと見続けているのだから。こんなにも待ち焦がれているのだから。
伝わっていないはずがない。わたしのことを知らないはずがない。
わたしは一瞬、黒い物にとらわれそうになった心を慌ててなだめた。
そんな風に考えてはいけない。何かおいしそうな物でも見つけたのかもしれない。
なぜならあんなきれいな鳥はきっと、わたしの知らない広い世界を知っているはずだから。
最初のコメントを投稿しよう!