ごめんにゃさい

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 宗介は足元に落ちた箱を拾い上げた。 「これはなんですか?」 「あぁ、クリスマスですから飾ろうかと思って」  宗介は落葉で侘しい(けやき)の樹を振り仰いだ。 「クリスマスーーー!」 「あと1週間ですから、果林さんが喜ぶかと思って」 「宗介さん!」 「すまんが俺も居るんだわ、そーゆーのは家でやってくれ」  宇野は居心地が悪そうに、今にも熱い抱擁と口付けの雨を降らせそうな宗介の背中を叩いた。 「ご、ごめんなさい」 「果林ちゃんは謝らなくて良いの、良いの」  宗介と宇野はLEDイルミネーションのチューブライトを取り出すと(けやき)の枝を飾り始めた。 「電源はっーーーーと、ほい、点灯ーーー!」  青白いライトが日暮れの街にまたひとつ灯った。宗介の指先は待ちきれずに果林の指先に触れた。果林はその指を優しく握り返した。 「すまんが俺も居るんだわ、そーゆーのは家でやってくれ」  仕事の相棒のラブシーンなど見たくないとばかりに宇野は横断歩道を渡って行った。歩行者信号が青色点滅から赤へと変わった。宗介は屈み込むと果林の唇を奪い、果林は宗介の唇に熱い吐息で応えた。 「宗介さん、ごめんなさい」 「なにがですか」 「これからも仲良くして下さい」 「ありがとうございます」  2人は手を繋ぎ横断歩道を渡った。
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