コンビニ

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コンビニ

 日付が変わった深夜のコンビニ。最後の客が店を出て一時間ほどになる。いつものように、客が途絶える時間帯になった。 「野口さん、何かいい儲け話ありませんかね」  賞味期限切れの食品のチェックを終わった夏目が、店外の清掃から戻って来た野口に聞いた。野口は三十歳ぐらい、夏目より年上で、職場では先輩だ。 「儲け話? 馬やボートで儲けてるんじゃないのか」  野口はからかうように言った。競馬と競艇が夏目の趣味であることを知っているからだ。もっとも、夏目にとっては趣味と言うよりは依存症と言ってもいい。 「馬やボートですか。当てれば大儲けですが、それが思うようにいかないから聞いてるんですよ」 「手っ取り早く稼ぐのなら、薬の治験なんてのはどうだ。一週間ほどで俺たちの月収ほど貰えるな。俺もやったことあるけどな」 「そりゃ魅力的ですが、一週間じゃなくて、この二三日で稼ぎたいんですよ」  夏目は賭け事に金をつぎ込んで借金をしている。初めは消費者金融から金を借りていたのだが、返済が滞って、今は融資をことわられている。仕方なく頼ったのが、闇金だった。その返済日が迫っているのだ。返済できなければどうなるのか。あまり考えたくない。闇金の担当者が猛禽類のような目で夏目を睨めつけたとき、背中に冷たいものが走ったのを思い出した。 「直ぐに金がいるのか……。あることはあるな」 「あるんですか。教えてくださいよ」 「俺の知り合いから聞いたんだけど、仕事は一日で破格の日当――俺たちの月収の二倍だ」 「それ、教えてください」  夏目は身を乗り出す。 「仕事は実験の助手。タイムマシンで未来や過去に行って帰って来る実験なんだとさ」 「タイムおマシン?」 「ああ、おかしいだろ。そんなもの真面目に研究してるやつがいるなんてな」  野口は鼻で笑う。 「野口さんの知り合いは行かなかったんですか」 「行くわけないだろ。だいたいタイムマシンなんて怪しいだろ。それに破格の日当と実験なんて危ない臭いがするな。俺も行かないな」 「そのバイト教えてください」 「お前、そのバイトやる気なのか」 「やってみようかなと……」  選択の余地はない。闇金の返済日は四日後だ。もちろん、月収の二倍の収入があったところで、すべて返せる借金ではない。しかし、少しでも返しておけば、返済期日を伸ばしてもらえるだろう。 「知り合いに聞いてみるから、分かったら教えるよ」  野口が少しばかり呆れ顔で言った。
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