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刑事
「行き詰りましたね」ラーメンの麺をズズズッとすすり上げて、北里刑事が言った。「闇金の線も消えましたし……」
「うん、闇金のやつらが保険金目当てに殺ったと考えたんだが、そうじゃなかったな」
麺を摘まんだ箸を途中で止めて、渋沢刑事が応じる。警察学校を卒業して日が浅い北里刑事に対して、こちらは刑事歴二十年のベテランだ。
「福沢博士の方も手詰まりですね」
「そうだなあ。福沢のアリバイは裏付けられたからな」
「ええ、夏目が殺害された頃には自宅におりました。寿司を届けたウーバーイーツの配達員も証言してますし、近所のコンビニで缶ビールを買ったことも分かってます。完璧です」
「そうだな、完璧だ。しかし、完璧すぎて却って怪しいんだ。俺の勘がそう言ってるんだがなあ。でも、そのアリバイは崩せないんだよな」
「渋沢さんの勘はよく当たりますよ。私も福沢博士が怪しいと思ってます。でも、彼のアリバイは作られたものです」
「どうやって作ったんだ?」
「笑わないでくださいよ」
「笑うかどうかは、話を聞いてからだ」
「博士はタイムマシンを使ったんです」
渋沢刑事は唖然として北里刑事を見た。しかし、彼は真面目な表情をしている。
「福沢博士は時間旅行を研究してましたよね」
「ああ、やってたな」
「博士は研究の結果、タイムマシンを完成させたんですよ。タイムマシンがあれば、完璧なアリバイも訳なく作れます」
「なかなか面白い話だ」渋沢刑事は冷ややかに言った。「確かに、タイムマシンがあれば可能だ。しかし、そんなバカな話、誰も信じちゃくれないさ。俺だってな」
「そうですか……そうでしょうね」
北里刑事は肩を落として、チャーシューに箸をつけた。
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