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福沢
研究棟に帰るや、<明日の福沢>は明日に戻った。
福沢は椅子に深々と座った。疲れた。テーブルの上の缶ビールを手に取る。プルタブを引くと一気に呷った。
ノックの音がした。この家を訪ねてくる者はいないはずだが、誰だろう。福沢は椅子から立ち上がり、ドアに向かった。
ドアを開けると、夏目が立っていた。一瞬、幽霊かと思った。けれど、直ぐに重大なことに気づいた。
福沢はリターンキーを押して、元の時間に帰っていなかったのだ。福沢はまだ過去の時間の流れの中にいたのだ。当然ながら、その時間の流れの中では、夏目はまだ殺されていないので、生きている。
殺される! 福沢は夏目に背を向けて逃げ出そうとした。が、首に紐のようなものが巻き付いた。苦しい。意識が遠のいて行く。
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