この晴れ渡る空の下で

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「先輩、そろそろ放してください。信号変わったんじゃないですか?」  腕の中に埋もれている私からは信号が見えない。先輩は少しだけ首を傾け、一呼吸おいてふたたび愛おしそうに私の頭頂部に頬を寄せた。 「先輩?」 「いや、まだだよ」  嘘つき。そんなことをしなくても私は――。  先輩の脛を軽く蹴り、三年前と同じ言葉を心の中でつぶやいた。
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