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午前四時二十三分、ガラスがビリビリと振動する音で目が覚めた。
電気のついていない寝室で時間を確認できたのは、唐突に世界が白んだから。
一瞬の静寂。ひゅっと息を吸う間もなく、雷鳴が轟いた。大粒の雨が窓を叩き、無遠慮な光と音は断りもなく何度も侵入してくる。
「近いな……」
今日も仕事だ。このまま起きるのは早過ぎる。完全に覚醒する前に再び夢の中に逃げ込もうと、私は固く目を瞑り薄手の夏蒲団を頭まで被った。
騒音の中で眠るのは慣れている。仕事上のバディである誰かさんは、助手席に座る私がどれだけ眠そうにしていようとしゃべりつづけるから。
鬱陶しくてしょうがないが、十も年上の大先輩なので文句は言えない。隙を見つけて目を閉じて、意識が落ちるまで耐え続けるのが常だ。
前まではこんなんじゃなかったんだけどな。
私は、格好良かった頃の先輩の姿を思い浮かべて息を吐いた。
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